ボイジャー・オブ・ザ・シーズ

福岡・博多港にアジア最大のクルーズ客船、ボイジャー・オブ・ザ・シーズが入港、各港のクルーズ誘致戦略は?

日本政府は2020年までに外国人観光客を年間に2000万人誘致することを目指すと発表しました。

そのような中、7月30日朝5時半~6時頃に福岡・博多港にアジア最大の客船、ボイジャー・オブ・ザ・シーズが寄港しました。

ボイジャー・オブ・ザ・シーズは、3000人以上の乗客定員を誇っています。

ボイジャー・オブ・ザ・シーズ
ボイジャー・オブ・ザ・シーズ Photo by Mike Smail

今回のクルーズは、7泊8日の日程で、中国天津を出発し、韓国仁川と済州、福岡・博多港を経て天津に戻るコースで、中国人観光客約3600人が乗船していました。

ボイジャー・オブ・ザ・シーズが入港した付近の駐車場では、中国人観光客を乗せるために、貸切バスが90台以上も待っていました。

バスの前では、日本の旅行代理店の責任者が中国側の添乗員と最終確認の打ち合わせを行っていました。

打ち合わせの内容は、「時間を厳守すること」、「人数の確認をすること」などです。

今回、中国人観光客は、わずか6時間で太宰府天満宮、キャナルシティ、福岡観光会館はかた、ホークスタウン、福岡タワーなど5ヶ所を訪れる予定です。

午前7時過ぎには、入国審査を終えて中国人観光客が船から降りてきました。

3600人もの人数の多さですから、バスに乗せるだけでも大変です。

午前9時前には、福岡市郊外の太宰府天満宮に中国人観光客達は到着しました。

3600人もの中国人で太宰府天満宮の境内は溢れかえり、それを見た日本人観光客はビックリしてしまいました。

昼食会場となる福岡観光会館は、午前8時前から準備にとりかかります。

当日の昼食として、1400食くらい予約されています。

一方、午前11時頃には、商業施設であるキャナルシティの家電量販店ラオックスでもボイジャー・オブ・ザ・シーズから来る中国人観光客対策をとっていました。 

具体的には、売れている商品の在庫の数を通常よりも5倍も多くしています。また、同店のスタッフ9割を中国が話せる人にしています。

この日に備えて在庫を増やした商品の中で一番人気は、炊飯器です。

12過ぎには、昼食会場の福岡観光会館はかたは、中国人観光客でほぼ満席となりました。

今では、福岡観光会館はかたも中国人の受入れに慣れていますが、過去は、食事の数の確認や時間などにズレが生じて、食事が余ったりや不足したりのトラブルもありました。

そうしたことから中国人スタッフを1人雇用して、4~5年かけてやっと受け入れる態勢ができてスムーズになってきました。

今回、巨大クルーズ船と中国人観光客の受入れに活躍した福岡市港湾局の担当者は、「中国だけでなく色々な国からのクルーズ船の誘致に力を入れていきたい」と話しています。

博多港への中国発着クルーズ船の寄港は、次のようなっています。

2011年 2012年 2013年 2014年7月現在
25隻 40隻 7隻 36隻

2013年に中国発着のクルーズ船が7隻に激減している理由は、尖閣諸島の国有化の問題があったからです。

心配されていた中国のバブルが弾けるのではないかということも、何とか保ってくれているので、中国からのクルーズ、観光客が戻ってきている状況です。

ボイジャー・オブ・ザ・シーズが日本に初寄港したのは、実は博多港でした。

福岡市港湾局クルーズ課によるとクルーズ客船誘致における博多港の強みは、次のとおりです。

  • 中国・韓国に近い
  • 天神や中洲などが港から近いコンパクトな都市である
  • 常設の入国審査でスムーズに入国できる

また、港湾局は2010年から、入港料を50%、岸壁使用料も引き下げる施策を行いました。

加えて、新クルーズ客船ターミナルの整備関連予算として9億円を計上しています。

このような福岡・博多港の動きに対抗して九州の他の港も対抗策を打ち出しています

沖縄那覇港では、今年4月に外国クルーズ船専用のターミナルをオープンしました。

長崎港でも大型客船が2隻、同時に接岸できるよう岸壁の拡幅を計画中です。

ちなみに2013年、外国籍クルーズ船の寄港回数は次のとおりです。

順位 港名 回数
1位 石垣 59
2位 那覇 41
3位 長崎 35
4位 横浜 32
5位 博多 19

このように、九州の各港は健闘しており、関東では横浜だけが入っており、関西の大阪港、神戸港、中部の名古屋港を凌駕しています。

しかし、2020年の東京オリンピックに向けて、東京港を始めとして各県・各港がクルーズ誘致合戦に本腰を入れてくるでしょうから油断はできませんね。