2016年1月11日の夜、三菱重工業長崎造船所香焼工場で建造中の大型クルーズ客船「アイーダプリマ」から出火し、7階部分の約15平方メートルが焼けました。
出火当時は、各社の報道によると船内には約200人~400人ほどの人がいたようですが、全員避難して人的被害は出なかっとのこと。
出火場所は7階のフロアの右舷側で劇場用の区画です。
午後8時半頃出火して、煙で船内のスプリンクラーが作動しました。また、造船所の自衛消防隊と消防車も13台が出動し、約1時間後には火勢が収まり、12日の午前0時10分に鎮火しました。
電気配線が出火元と見られています。
当サイトでも、アイーダプリマの状況はお伝えしてきましたが、問題は再三延期してきたアイーダ・クルーズへの引渡し時期はどうなるのかということが気にかかります。
昨年の12月に引き渡し期限を延長し、一体引渡し期限はいつになるのかの情報を待っていた矢先で、この火災事故です。
火災の範囲が15平米ですから、5メートル✕3メートルの範囲ですので、巨大な船体比べるとそう広くはないですが、引渡し時期にどのくらいの影響が出るかですね。
内部情報によると2月24日あたりではないかということでしたが、どうなるのでしょうか?
火災事故に関する三菱重工業の公式コメントについて
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次が1月12日に発表された三菱重工業のコメントです。
長崎造船所での客船火災事故について
昨日20時15分頃、三菱重工業株式会社長崎造船所香焼工場内で建造中の客船において火災が発生しました。
本船は、既に24時間監視の安全体制と安全システムが稼働状態にあり、火災発生後、スプリンクラーが正常に稼働し、直ちに、船主と当社が共同して初期消火を実施、その後、消防署が到着し、本格消火を経て、同日21時42分に鎮火を確認いたしました。
なお、船主乗組員と当社作業員が約400名乗船しておりましたが、火災発生直後、規定の避難要領に従い退船し人的被害はありませんでした。鎮火後、直ちに消防署の指導に基づき被害区画の保全を行い、その他の区画については安全確認後、速やかに引き渡し前の残工事を再開しております。
被害区画に関しては、警察や消防署等の現場検証を受けております。今後、原因究明と復旧対策を早急に具体化、推進していきます。近隣住民の皆様をはじめ、船主、株主、警察・消防等関係各位にご迷惑・ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。今後このようなことが発生しないよう再発防止に努めてまいります。
本船の引渡しにつきましては、お客様とも十分に協議の上、対応してまいりますが、4月30日より予定されているクルーズへの影響はないものと考えております。引き渡しの時期及びコストへの影響等につきましては、詳細を確認の上、適切にお知らせいたします。
各社報道では出火当時乗船していた人数は200人~400人とバラつきがありましたが、このコメントを見ると400人で船主乗組員と同社作業員であったことが分かります。
船主乗組員が乗船していたのですから、ハード・ソフト両面でアイーダプリマの4月30日から予定されているクルーズに向けて準備していたようですね。
つまり、あと3ヶ月もするとハンブルグで乗客を乗せてアイーダプリマを出港させるわけで、素人考えでも大丈夫なのかなと思いますね。
クルーズ船は、貨物船と異なり、動くホテルとエンタテイメント施設です。港から港へ安全に人を運ぶだけではなく、食、住、遊のサービスが高いレベルで提供されなければなりません。
ましてやアイーダプリマは、クラス1番船ですのですべての面で新しいもので、操船、サービスすべてのスタッフにとっても新しい船です。
かなりの不安な船出かもしれませんね。
アイーダプリマの4月30日のクルーズについて
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三菱重工業の公式コメントで言及されている4月30日のクルーズについて調べてみました。
Seascannerのサイトで次のようなページがありました。
http://www.seascanner.com/cruise-k83781-northern-europe-aida-prima-hamburg-rotterdam
まとめてみると次のとおりです。
アイーダプリマで航く北ヨーロッパクルーズ
2016年4月30日出発、ハンブルグからロッテルダム 5日間
月日 | 寄港地 | 出港 | 入港 |
---|---|---|---|
4月30日(土) | ハンブルグ(ドイツ) | 18:00 | |
5月1日(日) | 終日クルーズ | ||
5月2日(月) | サウサンプトン(イギリス) | 09:30 | 21:30 |
5月3日(火) | ル・アーブル(フランス) | 07:00 | 19:00 |
5月4日(水) | ゼーブルージュ(ベルギー) | 10:00 | 19:00 |
5月5日(木) | ロッテルダム(オランダ) | 08:00 |
カテゴリー | ユーロ | 円(1ユーロ=130円 |
---|---|---|
Inside | 765ユーロ | 99,450円 |
Outside | 940ユーロ | 122,200円 |
Balcony Comfort | 1,190ユーロ | 154,700円 |
Balcony | 1,420ユーロ | 191,100円 |
◯ 料金に含まれるもの
- すべての食事
- すべてのチップ
- 乗船下船時の荷物の移動
- 船内のエンターテインメント
- ワイン、ビール、ソフトドリンクなど
- 諸税、港湾使用料
- ほとんどの船内施設の使用
通常では、別途費用となるチップ、ワイン・ビール、諸税、港湾使用料などがクルーズ料金に含まれているのは嬉しいですね。
なお、アイーダプリマにかぎらずアイーダ・クルーズのクルーズを取り扱っている日本の旅行社は少ないので、クルーズを希望される方は、Seascannerのサイトやアイーダ社のホームページから申し込むことになると思います。
アイーダプリマ Aida Prima について
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総トン数 | 124,100 トン | 竣工年 | 2015?年 | 全長 | 300m | 全幅 | 37m |
航海速力 | 22ノット | 乗客定員 | 3,300人 | 乗組員数 | 未発表 | 船籍 | イタリア |
飛鳥3の影響は?
三菱重工業長崎造船所は、現在、日本で唯一の大型クルーズ船を建造できる造船所だと思います。
しかし、今回のアイーダプリマ建造をめぐる納期の再三にわたる延長、そして今回の火災事故と立て続けの不祥事に今後の造船業に暗雲が立ち込めています。
しかも、三菱重工はアイーダプリマの2番船も受注しているのですから、この船の建造もスムースに行くのかきわめて不透明な状況です。
もう、日本では大型クルーズ船の建造は無理なのかもしれません。
飛鳥2も1990年竣工ですから、船齢も26年以上と老朽化が進みつつあります。
そこで、飛鳥3の建造計画が進んでいるようで、長崎造船所で建造する話があり、今年3月に同社に発注されるという噂もあります。
しかし、アイーダプリマの建造具合を見ていると、この話もどこまで実現するのか分かりませんね。