最近、クリスタル・クルーズの動向が騒がしくなっています。
2015年3月3日の報道によると、日本郵船は、客船事業の見直しの一環として、アメリカにある客船事業の子会社で、本社がロサンゼルスにあるクリスタル・クルーズをゲンティン香港に売却すると発表しました。
売却額は、同社の企業価値5億5000万ドルを基礎に算定するとのことです。
クリスタル・クルーズは、日本郵船が豪華客船マーケットに参入するため1988年にアメリカで設立したものです。
1990年に第1船として、「クリスタル・ハーモニー」、を建造しましたがこの船は後に飛鳥Ⅱとなりました。
1995年にはクリスタル・シンフォニー、2003年には「クリスタル・セレニティ」と続きます。
クリスタル・セレニティ Photo by Trondheim Havn
老朽化が進んできたために、クリスタル・シンフォニーは、2009年と2012年、「クリスタル・セレニティ」は、2011年と2013年に改装をしました。
このような企業努力もあり、クリスタル・クルーズは、アメリカの旅行雑誌「コンデ・ナスト・トラベラー」の読者投票でも、通算21回中型船部門第1位に輝くなどトップブランドの地位を占めてきました。
しかし、世界ではもっと激しく状況が変化してきました。
クリスタル・クルーズの船と飛鳥Ⅱなどは、5万トンクラスですが、世界は10万トン以上のメガシップの時代です。
客室は、全室バルコニー付きのスイートが一般的となり、レストランの数も多くなり、ウォータースライダーやボルダリングができるなど遊具施設も充実させてきています。
大衆向けの船でありながら、ラグジュアリークラス顔負けのサービス、居住性を提供し、しかも料金が安いというのですから歯が立つはずもありません。
それにひきかえ、クリスタル・クルーズの船は、改装をしてきたかもしれませんが、船齢も20年を超えており、新造船をバンバン繰り出してくる外国船社の後塵を拝するようになってきました。
日本郵船も、お荷物になってきたクリスタル・クルーズを手放して、その分の経営資源を飛鳥Ⅱの新しい船を建造するのに集中する意図があるのかもしれません。
一方、売却先のゲンティン香港は、馴染みのあまりない名称ですが、実は、「スタークルーズ」と「ノルウェージャンクルーズライン」2つの船社を持っています。
どちらも、「フリースタイルクルージング」をコンセプトとしており、大衆的なカジュアルクルーズ船を運航しています。
そこに、クリスタル・クルーズのハイクラスなラグジュアリーシップが加わることになります。
日本のクルーズファンにとって、今回のクリスタル・クルーズ売却劇はどんな影響が出てくるのか気になるところです。