飛鳥IIを運航する日本郵船の2014年3月期は、客船事業の経常損益が09年3月期以来、黒字に転換する見通しとなっています。
その理由としては、高額至高の消費が好調で、それを受けて日本や米国のリタイアしたシニア層の間で人気が高まっているからです。
2008年のリーマンショック以降、日本郵船の足を引っ張っていたクルーズ客船事業の採算が良くなっていることは収益の下支えともなっています。
クルーズ客船事業の売上高は、約450億円と前の期より約3割増加し、経常損益は前記の37億円赤字から5億円程度の黒字になると予想されています。
連結経常利益は、前記に比べて約2.8倍の500億円となり、クルーズ客船の採算に対する影響は小さくありません。
採算改善の牽引役は、アメリカの子会社のクリスタル・クルーズです。
アメリカの富裕層向けに豪華クルーズ客船「クリスタル・シンフォニー」など2隻を運航しています。
地中海やスカンジナビア諸国、秋の紅葉が美しいカナダなどの1~2週間のクルーズの人気が高い状況です。
平均客単価は、株高などもあり、5000ドル(約50万円)前後と前期と比べて1割増し上がっています。
また、営業のやり方も変えたのがよかったようです。
従来は予約が少ないと出航日が近づくに連れて、運賃を値引きしていましたが、早めに予約するほど割り引くやり方に変更して、顧客の獲得に成功しています。
一方、国内のクルーズ客船も好調です。
飛鳥IIでは、日本の近海やアジア方面のクルーズが好調です。世界一周などの長距離クルーズでは、リタイアした団塊世代などの乗客も目立つようになりました。
夏祭りや花火大会を二泊三日程度でめぐる10万円台~40万円台のクルーズに人気があります。
来期についても、今期を上回るペースで長期クルーズの予約が入っており、黒字となる予定のようです。
さらには、「にっぽん丸」を運航する商船三井子会社の商船三井客船でも収益が改善しつつあります。
今年10月から2014年春先までの予約受付を始めましたが、申込件数は前年同期を3割超えて上回っています。
船内でのオペラ鑑賞などアミューズメントが充実したクルーズが好評です。
国土交通省によると、2012年の国内クルーズ人口は、内航及び外航合わせて前年比16%増の21万7000人と11年ぶりに20万人を超えました。
これも、団塊世代の退職などでマーケットが拡大しているからのようです。